研究内容

量子化学計算と量子ダイナミクス計算を用いた物性・化学反応解析および新規解析手法の開発を行っています。さらに、実験研究者との共同研究を通して、触媒反応や錯体の物性に関する理論計算も行っています。現在、以下の研究課題を主に行っています。

(1)「プロトン伝導物質中のプロトン伝導機構の解明」

プロトン伝導物質は電解質材料として注目されており、その伝導機構を理解することは高性能なプロトン伝導物質の開発には必要不可欠となります。そこで、プロトン伝導物質中のプロトン伝導機構の解明を目指して、理論計算に基づいた解析を行っています。これまでに、プロトン伝導物質中の分子の局所構造や運動性、プロトン移動に注目して、量子化学計算や分子動力学計算などの様々なアプローチを用いて解析を行っています。

 

Phys. Chem. Chem. Phys., 19, 16857, (2017). Phys. Chem. Chem. Phys., 20, 10311, (2018).

(2)「金属酸素錯体を用いたメタン酸化反応触媒の理論的設計」

メタン等の不活性アルカンの水酸化反応触媒の開発は現代化学の目指す最重要課題のひとつである。メタンを水酸化する酵素の活性種をベースにした金属酸素錯体はメタンを活性化する触媒として注目されています。したがって、触媒設計を行う上で活性化の仕組みや反応機構に興味が持たれます。しかし、その反応は複雑な素反応の組み合わせで進行していると考えられ、反応機構を明らかにするためには、量子化学計算が有効な手段となります。また、量子化学計算は未知な反応に対しても計算可能であり、触媒設計に対する先験的な知見を与えることが可能であると考えられます。これまでに、量子化学計算により銅二核オキソ錯体のメタン水酸化性能の予測を行っています。

Inorganic Chemistry 57, 8, (2018). “ACS Editors’ Choice”

(3)「プロトン移動の理論的解析手法の開発」

計算機技術の発展により様々な分子系に対して量子化学計算や量子ダイナミクス計算が用いられるようになった一方で、プロトン移動反応のような量子力学的性質が顕著に表れる反応の解析は困難な課題となっています。そこで、効率的なプロトン移動の解析を目指し、量子化学計算と量子ダイナミクス計算を用いた解析手法の開発を行っています。

使用ソフトウェア
Gaussian
Gromacs
Quantum ESPRESSO
(Orca)